2012年1月10日火曜日

Twitter文学賞【やってみようと思った気持ち】豊崎由美

わたくしトヨザキは、投票による民主的なランクづけには元々懐疑派でした。
 というのも、本屋大賞に顕著なのですが、そこそこ本を読んでいる人たちによる人気投票は、とんでもなくだめな作品はランクインできないという見識の高さを示すと同時に、しかし、先鋭的な作品もはじいてしまうという無難なつまらなさを露呈してしまうからです。
 ところが2009年末、「読んでいいともガイブンの輪!」(わたしが偶数月にやっている海外文学に特化したトークイベント)の参考にするため、Twitterで「今年読んで面白かったガイブン」の投票を募ったところ、「このミステリーがすごい!」や「週刊文春ベストミステリー」よりもずっと刺激的な結果が出たんです(こちらを参照 )。これはおそらく、わたしをフォローしてくださってる約1万人の方が、「そこそこ本を読む人」ではなく「すごく本が好き」な方だったからではないか。だとしたら、その皆さんを中心にして投票を募ったら、もしかすると「このミス」や「文春」や「本屋大賞」とは違う結果が生まれるかもしれない。そう思って、「Twitter文学賞」を立ち上げてみようと思ったんです。
 なぜ海外・国内それぞれの投票を1人1作に限るルールにしたかといえば、これは「このミス」の投票方式を反面教師にしました。「このミス」では自分にとって1位・2位・3位の作品とその理由を挙げるという投票の形をとっていますが、このやり方だと、大勢の人が3位に名前を挙げた作品が、まんべんなく点数を獲得し、結果1位になりかねない。つまり、比較的無難な作品が上位にランクインしがちなんです。
 というわけで、「Twitter文学賞」では、1作しか挙げてはいけないルールを設けました。たった1作のタイトルしか挙げられないのは苦しいと思います。わたしも苦しいです。でも、その苦しい選択を乗り越えて挙げるたったひとつのタイトルの価値は重い。わたしは、その重さこそが何よりも大事と考える者です。
 これまでにも、ネット投票による文学賞はいくつか存在しましたので目新しさには欠けるかもしれません。ですが、エンターテインメントと純文学を同じ俎上にのせ、かつ国内篇と海外篇を設ける賞はこれが初めてと認識しています。投票は国内小説だけでも、海外小説だけでも、両方でもけっこうです。ぜひ、あなたの「この1作」を教えてください。みんなで、これまでにない面白い文学賞を作っていきましょう!

豊崎由美

※「書評王の島」より転載

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