2012年2月23日木曜日

国内部門第1位・津原泰水さんからの謝辞

第2回Twitter文学賞で見事1位に輝いた『11 eleven』(河出書房新社)。著者の津原泰水さんよりいただいた謝辞です。
津原さん、転載の許可をくださり、ありがとうございます!

謝辞

 読者絶対主義を標榜してきた者にとりまして、たいへん名誉な賞を賜りました。謹んで拝受します。
 ただ申し訳なくも、子供の頃から一度として賞を授かったことがないものですから、頭の中に、こういう瞬間の喜びの回路が形成されておりません。未だ現実感もありません。
 受賞は本人以上に両親が喜ぶものとも伝え聞きますが、残念ながら共にこの世の人ではありません。
 したがいましてこの受賞を、「ひたすら精進せよ」との読者からの御叱咤と捉えますこと、ひとつお許しください。そう考えますと、すこし気が楽になります。


 ひねくれ者と笑われてしまいそうですが、「真の受賞者は読者」との想いも、また禁じえません。
 気が遠くなるほど長い年月にわたり、無冠の作家を支持し続けてくださいました皆様に、あらためて敬意を表させてください。無数の立派な友人に囲まれた、幸運な人生を、ありがとうございます。

 震災直後の、精神的にも物資の面でも厳しい状況において、果敢に本づくりを押し進めてくださった皆様に深謝します。
「読者による文学賞」の設立と維持に尽力なさってきた皆様に、一人の小説読者として深謝します。
 ツイッター文学賞に相応しく、最後に独り言をつぶやかせてください。
「お祖母さん、お父さん、お母さん、冠をいただきました。有難う御座います」

 では、仕事に戻ります。二〇一二年二月吉日 津原泰水拝

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