2012年に出版された翻訳小説リスト、詳細版です。月ごとに出た本の簡単な内容を紹介していきます(奥付降順)。巻数物はひとつにまとめました。書影や価格などもっと詳しい情報を知りたい方はタイトルのリンク先へどうぞ。出版社のサイトが開きます。
・『無慈悲な昼食』エベリオ・ロセーロ著 八重樫克彦・八重樫由貴子訳(作品社)
「タンクレド君、頼みがある。ボトルを持ってきてくれ」地区の人々に昼食を施す教会に、風変わりな飲んべえ神父が突如現われ、表向き穏やかだった日々は風雲急。誰もが本性をむき出しにして、上を下への大騒ぎ! 神父は乱酔して歌い続け、賄い役の老婆らは泥棒猫に復讐を、聖具室係の養女は平修女の服を脱ぎ捨てて絶叫!ガルシア=マルケスの再来との呼び声高いコロンビアの俊英による、リズミカルでシニカルな傑作小説。
・『ロリータ・クラブでラヴソング』 フアン・マルセー著 稲本健二訳(現代企画室)
麻薬・テロ対策で職権乱用で謹慎処分を受けた警察官の兄。娼婦に無垢な愛を捧げる、知的障害をもつ弟。帰郷した兄は、必死に、かつ暴力的に、弟を娼婦から引きはがそうとするが———テロ・移民・暴力を必然的に生み出す社会構造、売春・性・麻薬・カネをめぐって渦巻く欲望。その中を生き抜く人びとは愛に飢え、底知れぬ寂寥感を抱え込んでいる。スペイン現代文学のフロントランナーが描く「現代人の疎外」状況!セルバンテス賞コレクション第8作。
・『異境』 デイヴィッド・マルーフ著 武舎るみ訳(現代企画室)
ときは19世紀半ば、ところはクイーンズランド開拓の最前線。荒削りな自然の猛威にさらされ、人びとが身を寄せあって暮らす辺鄙な町に、アボリジニに育てられた白人の男、ジェミーが現れた。言葉をとりもどし、ヨーロッパの側に帰ろうとするジェミーを、人びとは戸惑いつつも受け入れる。しかし彼の存在は、平穏だった町にやがて大きな亀裂を生みだしていく。異質なふたつの世界の接触と変容を、両者に帰属し両者から疎外される存在を軸に複数の視点から描く現代オーストラリア文学を代表する傑作、待望の邦訳。
・『地図集』 董啓章(トン・カイチョン)著 藤井省三/中島京子訳(河出書房新社)
中国返還前の香港を舞台に、虚実ないまぜの歴史と地理を織りあげることで「もう一つの香港」を創出する長篇「地図集」のほか、ボルヘスやカルヴィーノの衣鉢を継ぐ作家のオリジナル作品集。
・『残念な日々』 ディミトリ・フェルフ著 長山さき訳(新潮社)
何もかも恥ずかしい、僕の過去。父とその親族との、貧しく、滑稽で下品で、あたたかな日々。1972年生まれ、ベルギー・フランダース地方を代表する若手の自伝的小説。
・『月曜日のリスはさびしい(上下)』 カトリーヌ・パンコール著 高野優(監訳)・臼井美子訳(早川書房)
さまざまな事件の記憶に苦しむジョゼフィーヌ。新作小説を書こうとしてはいるものの、なかなか進まない。そんなとき拾ったある日記に励まされるのだが――。フランス人女性が熱狂したエンターテインメント三部作、登場人物がそれぞれの道を歩みはじめる最終巻
・『中性子星の呪縛』 クルト・マール著 嶋田洋一訳(早川書房)
〔ローダン・シリーズ419〕ティフラーは、旧ミュータントのカクタの意識をみずからの体内にとりこんで、アルクル=ベータのある星域をめざした。アルクル=ベータを中性子星からブラックホールに生成する計画が進み、潜入させているコンセプトのケルシュル・ヴァンネとケロスカーたちに危険が迫っていたからだ!
・『ヘルプ 心がつなぐストーリー 上・下』 キャスリン・ストケット著 栗原百代訳(集英社)
1960年代アメリカ、ミシシッピ州。差別的な待遇で雇われている黒人家政婦=ヘルプのインタビュー集を出版し、南部差別社会に一石を投じたい作家志望の若い女性と、その信念を命がけで支え、実際に社会を変えた勇気ある女たちの物語。「もうひとつの『風と共に去りぬ』」と評されたこの小説は全米1130万部の記録的ベストセラーとなり、この春、日本でも一部の人々に熱狂的に支持された。作者の幼なじみによる同名の映画も大ヒット、アカデミー賞助演女優賞受賞。
・『河・岸(かわぎし)』 蘇童(スートン)著 飯塚 容訳(白水社)
文化大革命の時代、父と息子の13年間にわたる船上生活と、少女への恋と性の目覚めを、少年の視点から伝奇的に描く。中国の実力派作家による、哀愁とユーモアが横溢する傑作長篇。マン・アジアン文学賞受賞ほか多数受賞!
・『野蛮なやつら』 ドン・ウィンズロウ著 東江一紀訳(角川書店)
カリフォルニアでマリファナのビジネスで成功していたベンとチョン。だがメキシコの麻薬カルテルが介入し、友人にして二人の恋人オフィーリアが拉致されてしまう。二人は彼女を取り戻すために危険な賭けにでるが--
・『魔法の代償(上・下)』 マーセデス・ラッキー著 細美遙子訳(東京創元社)
国王ランディルの病は、日に日に重くなっていた。そんな国王の苦しみを和らげるために連れてこられたのが、若き〈詩人〉ステフェン。半信半疑の人々の前で彼が歌うと、国王の苦しみがたちまち薄れた。若く魅力的な詩人に、思わず心惹かれるヴァニエル。そしてステフェンも、ヴァニエルに焦がれるようになっていた。ヴァニエルの新たな恋の行方は? ヴァルデマールの将来は? 伝説の〈魔法使者〉ヴァニエルの生涯を描く三部作完結。
・『知りすぎた犬』 キャロル・リーア・ベンジャミン著 阿部里美訳(東京創元社)
たったひと言の遺書を遺して、若く美しいリサは窓から飛び降りた。娘を溺愛していた両親は、どうしても納得がいかず、調査を依頼してきた。リサは秋田犬を飼っていた。自殺だとしたら、どうして犬を見捨てることができたのか? 誰かに殺されたのなら、なぜ忠誠心が強く勇敢な秋田犬が彼女を護らなかったのか? とりあえず私は、犬を預かっているリサの太極拳の師匠に会いにいくことにした。コンビ探偵、アレグザンダー&ダシール。
・『時は老いをいそぐ』 アントニオ・タブッキ著 和田忠彦訳(河出書房新社)
東欧の元諜報部員、ハンガリー動乱で相対した二人の将軍、被爆した国連軍の兵士など、ベルリンの壁崩壊後、黄昏ゆくヨーロッパで自らの記憶と共に生きる人々を静謐な筆致で描いた最新短篇集。
・『罪悪』 フェルディナント・フォン・シーラッハ著 酒寄進一訳(東京創元社)
罪人になるのは簡単なのに、世界は何も変わらない。──ふるさと祭りの最中に突発する、ブラスバンドの男たちによる集団暴行事件。秘密結社イルミナティにかぶれる男子寄宿学校生らの、“生け贄”の生徒へのいじめが引き起こす悲劇。何不自由ない暮らしを送る主婦が続ける窃盗事件。弁護士の「私」は、さまざまな罪のかたちを静かに語り出す。「このミステリーがすごい!」第二位など、年末ベストを総なめにした『犯罪』に比肩する傑作!
・『欲望の裏通り(カイロ三部作)』 ナギーブ・マフフーズ著 塙治夫訳(国書刊行会)
アラブ圏初のノーベル文学賞作家マフフーズの代表作「カイロ三部作」初完訳版の第2部。一家3代にわたる壮大な大河小説で、舞台は1924年から27年までとなる。1922年にエジプトは独立したが、その後も政変は続いていた。第1部で壮年であったアフマドは初老となり、若いザンヌーバを愛人として囲う。男盛りのヤーシーンは、弟の恋人であったマルヤムと再婚したものの、ザンヌーバとの浮気が原因で離婚。理想を追う青年に成長した三男カマールは親友の姉アーイダに恋をするが、彼女はカマールの友人と結婚。失意のカマールは小学校の教師となり、酒と女にふける――。
・『ゴールデン・パラシュート』 デイヴィッド・ハンドラー著 北沢 あかね訳(講談社文庫)
コネティカット州ののどかな村で、ごみ拾いのピートが惨殺された。彼の意外な正体が発覚し、謎はさらに深まる。恋人の女性警官デズとともに、映画評論家ミッチが真相解明に乗り出した。そして、ミッチの手元には、少女売春をリアルに描いた小説が持ち込まれ…。MWA賞作家による人気シリーズ第5弾。
・『第六ポンプ』 パオロ・バチガルピ著 中原尚哉・金子浩訳(早川書房)
環境汚染の影響から、少子化と低知能化が進んだ近未来を描くローカス賞受賞の表題作、ヒューゴー賞/ネビュラ賞受賞作『ねじまき少女』と同設定で描かれたスタージョン賞受賞作「カロリーマン」ほか、一〇年代のSF界を担う新鋭が描く全十篇を収録した傑作集
・『冬の灯台が語るとき』 ヨハン・テオリン著 三角和代訳(早川書房)
〈英国推理作家協会賞インターナショナル・ダガー賞/「ガラスの鍵」賞/スウェーデン推理作家アカデミー賞受賞作〉ヴェスティン一家が島に引っ越して間もなく一人が死に、住みはじめた屋敷でも異変が相次ぐ。そして死者が帰ってくるというクリスマスに、猛吹雪で孤立した屋敷で明らかになる真相とは。三冠に輝いた傑作
・『粛清』 ソフィ・オクサネン著 上野元美訳(早川書房)
フェミナ賞、北欧理事会賞ほか全世界で11の文学賞受賞。エストニアの小村に暮らすアリーダは、ある朝、家の庭に若い女が倒れているのを見つける。また近隣のいやがらせ? 悩みながらもアリーダは衰弱している女ザラを家にあげてしまう。激動の歴史に翻弄される女達の邂逅を描く、フィンランドの新鋭作家の長篇小説
・『脱出空域』 トマス・W・ヤング著 公手成幸訳(早川書房)
「高度を維持せよ。いかなる状況においても上昇および下降を禁じる」そのメッセージを機に何の危険もないはずの輸送任務は一変した。負傷者を空輸する輸送機に爆弾が仕掛けられ、着陸不可能となったのだ。機長のパースンは老朽機を必死に操り、わずかな可能性を求めて苦闘する! 好評『脱出山脈』に続く第2弾
・『エラスムスの迷宮』 C・L・アンダースン著 小野田和子訳(早川書房)
〔ディック賞受賞〕人類居住星域の周縁部に位置し、負債奴隷制を基盤とするエラスムス星系は、戦争の危険がもっとも高いホット・スポットに認定された。守護隊の元野戦指揮官テレーズは、戦争の危機を回避し、盟友ビアンカの謎の死の真相を明らかにすべく、混沌と権謀術数が渦巻くエラスムス星系へと向かうが!?
・『パラダイスの幻影』 フランシス&ヴルチェク著 嶋田洋一訳(早川書房)
〔ローダン・シリーズ418〕テケナーとジェニファーは、ハルト人の宇宙船《フォラ》に乗り、惑星テルツロックの周回軌道上にいた。コルノル・レルツは、ハルト人たちが狂暴化しないようにするため、軌道上からクリスタルを攻撃し、壊滅させようとしている。テケナーは、その攻撃をなんとか止めようとするが……!?
・『恋と革命のモンゴル―自由へ―』 ミャグマルジャヴ・ガンバータル著 石河 信昭訳(ユーフォーブックス)
モンゴルでベストセラーになった本の、初の日本語訳版。 ※版元サイトに情報ないためAmazonにリンク
・『人生と運命 2』 ワシーリー・グロスマン著 齋藤紘一訳(みすず書房)
ウクライナの町から狩り出され、移送列車でユダヤ人絶滅収容所に到着した人々をガス室が待っている。生存者グループに選別されて列から離れる夫に結婚指輪とパンを手渡す妻。移送列車で出会った少年の母親がわりをするうちに、生き残る可能性を捨てて少年とガス室に向かった女性外科医──。赤軍記者として解放直後のトレブリンカ収容所を取材したグロスマンは、ナチ占領下ソヴィエトのホロコーストの実態を最も知る人間だった。グロスマンの生涯をかけた哲学的思考が文学に結晶した圧巻の第二部。
・『農耕詩』 クロード・シモン著 芳川泰久訳(白水社)
フランス革命、第二次世界大戦、スペイン市民戦争――三つの戦争をめぐる〈彼〉らが、二百年にわたり培われてゆく長篇小説。ノーベル文学賞受賞を決定づけた、ヌーヴォー・ロマンの最高傑作。
・『ジェンナ 奇跡を生きる少女』 メアリ・E・ピアソン著 三辺律子訳(小学館)
いつとはわからない近未来を舞台にしたファンタジックな物語です。記憶を無くした少女が記憶を取り戻していくにつれて、自分の存在の秘密を知ることになり葛藤します。自分は誰なのか、どうしてここにいるのか、なぜ何も覚えていないのか……。これは、記憶喪失なのだろうか?それとも、他に理由があるのか……?そこには、近い将来起きるかもしれないこと、絶対ないとは言い切れないことが起きています。特殊な状況におかれたジェンナの物語は、急展開していきます。ミステリーであり、SFであり、思春期の少女の心の動きを描くYAでもあり、生命のあり方を見つめる科学小説でもあり、親子の葛藤をテーマにした家族小説でもあり、切ない恋愛小説でもある、贅沢な一冊です。
・『アメリカ本土空爆指令 上・下』 デイル・ブラウン著 伏見 威蕃訳(扶桑社)
ロシア軍による全面攻撃が米軍に対して開始された。米軍史上、最悪の危機の勃発に闘将はどう反撃するのか。現代アメリカ最高の軍事冒険小説家が贈るハイテク軍事サスペンス!
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